新生

どうやらまた生まれ変わったらしい。

見慣れぬ景色、低い視界、稚い身体。現状認識はスムーズだった。今回は特殊なところではなく、日本の一般家庭のようだ。苗字が谷山である以外は名前もだったし、記憶の彼方である元の世界と変わりない。

ただ、これは世界の違いなのか、私の違いなのか。虚はいないが幽霊、というものがやたら多く見える。尸魂界のときはそこまで現世には滞在しなかったので比べようがないし、ハンターでは死者の念がそれに該当したが、ここまでの数ではなかった。

まさかまた何かの漫画の世界なのかと思って斬魄刀や鬼道、念能力の確認をした。全て問題なく使えたが、一向にそれらしい事件は何も起こらなかった。

新しい両親は、必然的に周りとは違う、少々どころでなく変わった子供になった私をちゃんは面白い子ね、の一言の元大事にしてくれた。幽霊が見えると自己申告すると、母からはじゃあ将来は巫女さんね! 父からは凄いぞさすが俺の娘! と返ってきた。そこそこ天然夫婦の認識が重度の天然夫婦になったのはその時だ。

近くの神社の神主さんがそういったものを感じる人だったので、仲良くなりつつ大きくなっていき、小学生になった頃。父が事故で亡くなった。あまりに突然の別離に母も私もしばらく悲嘆に暮れたが、母は私をしっかり育てようと奮起したようだった。それでも家計は以前より苦しくなったので神主さんの伝手で副業を始めた。

その副業だが、元死神のスキルと幽霊の多さを生かして祓い屋『』を名乗った。初めは子供だからと訝しむ相手がほとんど。しかし、何かを取り出す動作をし、ちょっと腕を振り回すだけで肩が軽くなったり、工事ができるようになったりする人が増えると、どこから聞きつけてくるのか名指しで依頼が定期的に舞い込むようになった。(実際は斬魄刀のを隠でかくし、魂送をしているのだが)

仕事で休みがちながらも中学に上がり、収入が以前の父の月収を超え始めた頃。母が倒れてそのまま帰らぬ人となった。生活に余裕ができたとはいえ、元々体の強い人ではなかった。無理が祟ったのだろう。親戚が全くいないので人の少ない葬儀で、天涯孤独という言葉が身に沁みた。本当に良い両親だったのだ。

後見人には幼少のころより世話になり、今も時々依頼を斡旋してくる神主さんがなってくれた。住むところも、部屋が余っているとのことで神社の近くのお家にお邪魔する形になった。奥さんも快く受け入れてくれ、いくら感謝してもしきれない。

そして時が過ぎ、学業と仕事が両立しやすいよう、そういった配慮のある高校に神主さんの勧めで入学してしばらく。一つの依頼がその高校からもたらされた。