04
次の日、里は昨日とはまた違った騒ぎに包まれていた。子供の私に入ってくる情報は少なかったが、同盟は一度破棄されるようだ。思い出したが、昨日の誘拐事件は相手のお偉いさんが仕組んだものだったはずだ。ここで強く出て不平等条約でも結んでしまえるはずなのに、それをしないのは木の葉クオリティなのだろう。
それからしばらくしても、何事もなく過ぎた。どうやら=私にはたどり着けないようだ。警戒しすぎかもしれないが。夜の確認作業を再開して、その後は特に不穏なこともなっかた。
それから1年くらいはあっという間で、平穏に過ごした。新しくシカマルやチョウジといの経由で知り合ったが、あまりみんなで遊ぶという事がこの当時から得意じゃないようなのでそこまで毎日のように会うわけではなかった。それに、最近父親がノって来ていて、修業時間が延びて来ているのだ。内容も随分レベルが上がって来ていて、明らかに3歳過ぎのお子様相手のものではない。でも面白いのでついこなしてしまう自分がいたりして、うちの子は天才だ! と父親を喜ばせてはさらに先に進む、という状態になっている。ただ嬉しいのは、はしっかりしてるから大丈夫、そこらの子供より強いから。と一人歩きが許可されたのだ。4歳にしてそれは現代人感覚では早いが、忍者の里的には普通なのだろうか。
まあともあれ自由に出歩けるのであちこち回ってみることにした。といっても普通に子供の足で行ける範囲でだが。何日かうろちょろした結果、ヒナタを見つけた。お付きらしき人と公園に来ている。端っこの方でもじもじしていたのでちょっと強引かもしれないが誘ってみる。
「どうしたの?」
「えっ、あ、あの」
「こっちで遊ぼうよ!」
「え、でも…」
「行こ!」
そのまま丁度人がいなかったブランコに始まり、一通り公園を回った。帰る頃にはヒナタ、ちゃんと呼び合う仲になった。子供はすぐに友達になれるものだ。また明日ねー、と手を振って別れた。その日からはちょくちょくヒナタと遊んで過ごした。私とは良く話すのに他の子とは駄目みたいなので、これはいかんといのに引き合わせてみたりしてヒナタの友達増産計画も進めてみた。楽しそうにしているので成功だろう。
他に原作前に起こることといったらうちは一族の件だけだろう。でもあれはどうしたらいいのか正直わからない。虐殺を起こらないようにしてもクーデターが起こってしまえば犠牲になる人が余計に増えてしまうかもしれないのだ。
05
うちはについて色々考えてみたが、結論は出なかった。他人の命や運命を背負うほど大きなことを成したい訳ではない。放っておくと後味が悪いだけだ。確か事が起こるのは私たちの世代がアカデミーに入ってからなのでまだ時間はあるし。それまでにサスケやイタチに会ってみて決めようと思った。一人で出来ることはたかが知れているし、冷たいかもしれないが全責任を負おうとは思っていない。
それよりも急務として気になるのはナルトである。この間母親と買い物に行ったとき、商店街の近くで皆に避けられている金髪の子供を見かけたのだ。その時に母親にあの子にあまり近付いちゃだめだよ、と言われたのが問題だった。世間一般の反応なのだろうが、優しい母親からそのセリフが出たのはちょっとショックだった。
しかし、である。周りに邪険にされて、寂しそうな目でこちらを見つめるナルトと公園で遭遇して無視できるだろうか。いや、できまい。周りの子供たちはナルトに気付いた親御さんたちがこそこそと幾人か連れ立って帰ってしまったので、つられてすでに居ない。私も一旦帰るふりをして戻ってきたのだ。気配を探ると暗部の見張りが付いているようである。しかしまあ、ただ遊ぶだけなので気にすることもないだろう。一人でブランコを漕いでいるのに近付く。
「ねえ」
「っ!?」
別に気配なぞ消していないのだが、話しかけられると思っていなかったのだろう。びくついてこちらを見上げる目と目が合う。悲しい色をしていると思った。これは偽善だろうか。
「一緒に遊ばない?」
「え?」
「一緒に遊ぼうよ」
「…いいの?」
「ダメだったら誘わないよ。とりあえずブランコで競争する?」
「うん!」
途端に顔を輝かせたナルトは勢いよくブランコを漕ぎだした。他に誰もいないし、入ってこない公園で夕暮れまでひとしきり遊んだ。
「もう帰らなきゃ」
「え…」
酷く淋しそうにこちらを見るのに、まだ名乗っていないのに気付いた。
「私はだよ、。キミは?」
「オレ、は、ナルト…うずまきナルトだってばよ!」
「じゃあナルト、また明日ね」
「ホント!? また明日!!」
嬉しそうにいつまでも手を振るナルトに時々振り返っては手を振り返しながら、その口癖はこんなに小さいころからあったんだな、なんてどうでもいいことを考えていた。
家に帰って、確立としては半々位の家族3人揃った夕食を食べて布団に入った。考えるのはナルトの事だ。このまま明日も遊んでもいいが、親に見つかったらおそらく今日の他の子たちみたいに連れ帰られてしまうだろう。それはナルトが傷つくだろうし、本意ではない。今夜中に隠れて遊べる場所を探しておこう。
――、今晩ちょっと手伝ってくれる?
――是非もない、が、隠し事か?
――親に隠し事をするのは子供の精神的成長の一段階だよ。
――物は言い様だな…。
06
夜中に家をこっそり抜け出してと手分けして子供の足で行けてかつ人目に付かない場所を探しておいた。次の日、修業はなかったので朝から昨日の公園に向かう。まだ早いのにナルトは公園の前で待っていた。道行く人の嫌悪の眼差しに縮こまりながらも立っている。人通りの多いところで声をかけるのも難なので(母親に連絡が行っても困る)変化する。おなじみの姿だ。
「ナルト」
「…お兄さん誰だってばよ」
「が待ってる。こっちだ」
「ホント!?」
最初は警戒心バリバリだったが、名前を出した途端に霧散した。ホイホイついてくるあたり、誘拐とかされないか心配だ。後ろにいる暗部は特に反応しない。深く考えず、公園からほど近い森の中の開けた場所に出て、煙を立てて変化を解く。
「じゃーん!」
「!?」
「変化の術でしたー」
「すごいってばよ! ね、ねえ、オレにもできる!?」
まとわりついてくるので印を教えたが成功はしなかった。でもそのままのノリで忍者ごっこに発展したのでそれで良いのだろう。お昼は母親に多目に作ってもらっていたお弁当を二人で食べて、夕方まで木登りなどをして遊び倒した。今度はここで待ち合わせ、と約束して別れる。森の手前で別れて家に帰る途中、パイプをふかした火影に遭遇した。
「火影さまこんにちはー」
「おぉ。こんにちは、と言うには少し遅いかもしれんの。危ないので送って行こう。お家はどっちじゃ?」
「あっちだよ」
偶然ではなく、思いっきり私に用事があるのだろう。差し出された手を握って指を指すと相好を崩した。歩きながら話す。
「今日は何をしたんじゃ?」
「お友達と遊んだの」
「それは楽しかったの。何をして遊んだんじゃ?」
「忍者ごっことか、かくれんぼとか、木登りとか…」
次々指折り数えてやると笑みが深くなる。その後も他愛無い話が続いたが、不意に少し真剣な顔で尋ねられた。
「は友達を誘うのに変化の術をいつも使うのかね?」
「…」
立ち止まって見上げると、こちらを探ると言うよりは何かを心配するように見ていた。水晶玉で見れるんだったか、この人は。それとも暗部の人に報告でもされたのだろうか。でも、こちらには引け目に思うことは欠片もない。唯一あるとすれば。
「…お母さんには内緒にしてくれる?」
「勿論だとも」
「今日一緒に遊んだナルトとね、遊んじゃいけませんって言われたの。でも、一人はさびしいからこっそり遊ぶことにしたの」
「…そうか」
「皆には見つからない秘密の場所で遊ぶんだよ」
「これからも遊んでくれるかの?」
「うん!」
元気に返事をすると心から嬉しそうに笑って撫でてきた。別にこちらは演技をしているつもりはない。年相応の振る舞いで、真実を話しているだけだ。家に着く直前に最後に、と聞いてきた。しかしここまで話していて悪い感じはしなかったので、この人になら良いかな、と思った。繋がりがあると便利だし。
「変化した相手は知り合いかの?」
「うん。私だけのだよ」
「だけの? …会うことはできるかの」
「火影さまが今日の夜ヒマならきっと」
「そうか」
「一人で待っててね」
もう門まで着いていたので、ではな、と言う火影に手を振って家に入った。