3次試験01

3次試験の会場につき、飛行船から降ろされる。プレートを配っていた豆っぽい人がルールを説明しだした。72時間以内に生きてこの足元の塔を下りきれば合格らしい。丸3日は長い。どうやって降りるかを探していると、壁伝いに降りようとした受験生が怪鳥にやられてしまった。だんだん人数が減ってきて穴に落ちた人を見かけたので、足元を気にしながら歩いているとゴンとキルアに呼ばれた。扉を5つ見つけたそうだ。

「おそらくこのうちのいくつかは罠…」
「だろうな」

クラピカとレオリオが少しためらうが、ゴンとキルアはあっけらかんとしている。2人はもう決めたらしい。結局、5人でジャンケンして1つずつ選んで入ることになった。

「決まったな。1、2の3で全員行こうぜ。ここでいったんお別れだ。地上でまたあおうぜ」
「ああ」
「1、2の3!」

レオリオ以外が問題なく床に着地した。驚いて顔を見合わせ、笑いあう。

「短い別れだったな」
「全く」

この部屋も扉がないが、張り紙があった。多数決の道らしい。置いてあってタイマーをそれぞれ腕につけるとドアが現れ、放送が入り説明を補足した。全員一致でドアを開けるボタンを押し、先に進んだ。出てすぐにも2択問題があった。左に行かないと落ち着かないレオリオに対し、クラピカが色々説いているが、ではなんとなく右にした私は天の邪鬼なのだろうか。

しばらくそうして進んでいくと、真ん中が舞台のようになっている広い空間に出た。反対側から出てきた覆面を脱いだ人は雇われ試験官らしい。お互い1人ずつで戦い、3勝以上すれば勝ち。引き分けはなし。単純だが、危険かもしれない。まずは説明していた声の大きい人が出てくる。見た感じ、相手たちの中では強そうな方だ。クラピカやレオリオが何か考えている中、声を上げる。

「私が行く」
「なにっ!? が!?」
「…いや。いけるかもしれない」

レオリオが声を荒げるが、クラピカは冷静に言う。ヒソカとの一幕を思い出したのだろう。ゴンとキルアも同意してくれる。

なら大丈夫だよ」
「…ま、1人だけボール取れたしね」

つながれた細い橋を渡り、スキンヘッドの男と向き合う。

「さて、勝負の方法を決めようか。俺はデスマッチを提案する! 一方が負けを認めるか、または死ぬまで戦う…どうだ?」
「いいよ。でも、このリングから出ても負けにしようよ」
「どちらにしろ落ちれば死ぬが…いいだろう!」
「じゃあ始めようか」
「その覚悟見事! それでは――勝負!!」

その言葉とともに殴りかかってくる男。だが、次の瞬間には出てくる前の場所に轟音と共に戻った。皆があっけにとられる。

「…私の勝ち」

宣言して、来た道を戻った。

02

待機場所に戻ると何をしたか聞かれたので、蹴っただけだというとレオリオとクラピカに微妙な顔をされた。君たちだってこれくらい出来るようになるはずです。

さて、次の勝負にはゴンが元気よく名乗りを上げた。相手は少し細身の男だ。ロウソクの火が先に消えた方が負けらしい。明らかに長さが違う2本にゴンは迷わず長い方を取って勝った。裏なんて考えてはなさそうだったが。

3戦目はクラピカ。敵は幻影旅団のふりをしたことで逆鱗に触れ、一瞬で沈められる。緋の目はまだ見ぬ敵への憎悪で燃え上がっていた。やはり復讐は止められないだろうか。

これで3勝になり通過できるかと思われたが、まだ終わりではないらしい。さっき蹴りだした男が復活したのか、先程までよりは小さい声で言う。体が痛むのだろう。

「まだ決着はついていない。それに、初めに3勝以上と言ったはずだ。全員に1回ずつ戦ってもらう」

決着をつけるつけないでレオリオとクラピカが揉める。信念は絶対に曲げないというクラピカにレオリオは多数決を持ち出すが、上手くいかず拗ねてしまった。

数時間たって、クラピカが倒した男が実は死んでいるんじゃないか、と持ち上がる。それで気を取り直したレオリオと次の相手の試合として賭けが始まった。途中、に見せられるものではない、と言ってクラピカに目を塞がれた。挙句賭けに負け、50時間支払わされる始末。コメントのしようがない。

そして最後の試合はキルアだ。相手の御大層な前口上が終わるか終らないかのうちに一瞬で勝負がついた。この歳でその技はやはり才能なのだろう。少々グロいが。

結果、4勝1敗で次に進めることとなった。まずは50時間小部屋でつぶしてからだが。

「…キルア、さっきの技はどうやったんだ?」
「技ってほどのもんじゃないよ。ただ抜き取っただけだよ。ただし――ちょっと自分の肉体を操作して、盗みやすくしたけど」

音を立ててキルアの右手の形が変わる。

「殺人鬼なんて言っても、結局アマチュアじゃん。オレ一応元プロだし。オヤジはもっとうまく盗む。抜きとる時相手の傷口から血が出ないからね」
「……ふん、頼もしい限りだな」

レオリオは言うが、たずねたクラピカは顔が引きつっている。それより、とキルアがこっちを向く。

だよ! どうやって蹴ったらあんな音がするんだ?」
「うむ。トラックがぶつかったような音だった」
「蹴った足が見えなかったよ」
「いや、ホントにただ強く蹴っただけなんだけど…」
「そりゃおかしいぜ」

レオリオが微妙な顔で見てくるが事実だ。瞬神夜一の妹として、脚力には自信があるが。

「あ、またシュンポってやつを使ったの?」
「そうだよ、あれ教えろよな。丁度今から暇だし」
「狭いから大して練習できないけど…暇ならやろうか」

これから2日、退屈せずに済みそうだ。

03

2日あるとはいえ狭いので大した練習はできなかったのだが、さすが天才というべきか。キルアは瞬歩のとっかかりを掴んだらしい。そんなことをしたり、寝たり備え付けの食料を頂いたりしていると50時間は結構速く感じた。

ついに入ってきたのとは別の扉が開いたので、皆で急いで出発する。が、残り時間があまりなく、少なからず焦っているのにそこからは意地の悪いクイズや罠が続いた。特にレオリオがかなり憔悴している。ゴンは相変わらず楽しそうだが、クラピカも疲れをのぞかせている。平気な顔をしているのはキルアと私だけだ。

残り時間が1時間を切ったころ、ようやく最後の別れ道にたどり着いた。頑丈そうな鉄製の扉が2つある。○は5人で行けるが長く困難な道、×は3人しか行けないが短く簡単な道。前者は45時間掛かるが、後者は3分で行けるらしい。ここまで来てこの問題とは、本当に意地の悪い試験だ。みんなで合格したいゴンをよそに、レオリオを筆頭にギスギスした空気になる。戦って決めよう、というレオリオとキルアに、ゴンが反論する。

「やめてよ!! オレ、どうしてもみんなで通過したい! だから一人でもかけちゃダメなんだ!」
「まだそんなこと言ってんのか? 他にどんな道があるっていうんだ!?」
「だから、みんなでそれを考えようよ!!」

キルアが聞き返すが、ゴンにも有効な手立てはないようだ。業を煮やしたレオリオが黙っているこちら(クラピカは冷静だし、私はどうにかなるだろうと思っている)に聞いてくる。

「えぇい、クラピカ! お前は?」
「…私は○だ。ゴンの言う通り、他に何か手があるかもしれない」
「じゃあは!?」
「私も○かな…誰か残して受かっても後味悪いし、何とかなるんじゃないかな」
「でも45時間かかるんだぜ? ムリだって」
「絶対、何かいい手があるはずなんだ…何か!」
「いっそ扉を壊しちゃう?」
「いくらの蹴りがすごくともそれは無理だろう…」
「それだ!!」

ゴンの名案とは、一度○の長く困難な道に入ってから、部屋にある武器を使って×の短く簡単な道へ壁を破って入る事だった。皆ですぐに作業に取り掛かる。かなり力を入れたのもあり、ある程度時間はかかったものの壁は壊れる。ゴンが歓声を上げる。見えた簡単な道はすべり台だった。

「やったぁ! 開いた!!」
「はは…こりゃ簡単だわな」
「だが残り時間もそうない。急ごう」
「そうだね」
「ここまで来て不合格はごめんだぜ」

滑り降りると、残り30分のアナウンスが鳴ったところだった。