4次試験01

制限時間が過ぎ、自動で開いたドアから外に出る。久しぶりに日の光を浴びた気がした。待ち構えていたのは変な髪形の小さな男だった。今回の試験官なのだろう。

「諸君。タワー脱出おめでとう。残る試験は4次試験と最終試験のみ。――4次試験はゼビル島にて行われる。では早速だが、これからクジを引いてもらう」

試験官は助手の持ってきた箱を示す。中には今残っている者の受験番号が入っているらしい。タワーを脱出した順にクジを引く。1番はヒソカ、2番は針人間(確かキルアの兄だ)、3番はハンゾー。その後に続き、最後に残ったものを引く。

引いたクジの番号は箱に記録されていて、手元のカードは処分しても良いとのことだ。4次試験は互いのナンバープレートの奪い合い。自分と、クジで引いた番号であるターゲットのものが3点、その他の受験生のものは1点。1週間の間に6点集めることで合格になるそうだ。女性が来年の受験の事について話すが、皆周囲を気にしてはいてそれどころではない。空気が悪い中、ゼビル島に向かう船は出発した。

キルアとゴンとクジを見せ合う。89と199と44。ヒソカを狩らなければならないゴンだが、奮い立っている。私とキルアはターゲットに心当たりがない。もがんばれよ、と言われ別れた。

「25番スタート」

最後の合図とともに島に入り、どうしたら良いか考える。サバイバルの知識は乏しい。そもそもこの世界の植物なんてゴンに教えてもらったクジラ島の一部の物しか知らないので、食べるものにも困る。早急にプレートを集めて誰かと合流したいところだ。

しばらく適当に近い人の霊圧に向かって歩いているとつけてくる気配があった。それも一つではない。しかも、2つはしばらく気が付けなかったほど薄い。霊圧をほとんど感じないあたり、念能力者の試験官が気配を消しているのだろう。確かそういった技術があったはずだ。だが、霊圧までは完全に消せていない。分かり易い最後の1つは私がターゲットの受験者に違いない。だが、いつまでも追われるのは趣味じゃない。

「来ないならこっちから行くよ?」

言い置いて、隠れている受験生の背後に回りこみ、気絶させる。木にもたれかからせて、プレートを奪っておく。このまま適当に狩って、6点分集めてしまうのも良いかもしれない。でも今更だが、ボールゲームには勝ってるし、もうライセンスを貰う約束はしている。そこまで真面目に受ける必要もないかもしれない。…聞いてみるか。

02

「こんにちは」
「!?」

瞬歩で背後に回ると、なんと試験官はメンチだった。つける試験官の女性不足に駆り出されたらしい。ハンター試験、意地が悪いばかりかとも思ったが意外と配慮されている。

「心臓に悪いヤツね…でも、会長がわざわざアタシに頼んだ訳がわかったわ」
「その会長から何か聞いていません?」
だっけ…アンタがもう試験を受かってるって聞いたわ。でも、約束だしきちんとやってるかどうか見て来いって言われたのよ。6点ちゃんと集めなさいよね」
「分かりました」

いったんメンチと別れ、また近い気配のある方へ向かって歩く。2つが近接しており、戦っているようだ。到着すると、勝負がついたところだった。勝ってプレートを得た武人風の男が話しかけてくる。

「…不意を打たないのは良い心がけだ」
「どうも」
「子供とはいえここまで残っているのだ。するなら尋常に勝負をしよう」
「…いいよ」

2人で構えて向き合う。一瞬風が止んだと同時に打ち込んでくる。躱し、しばらく拳と蹴りの混ざる応酬をする。相手が驚いている気配が伝わってきた。綺麗な型で戦うので白打の練習には良い相手だ。が、遅い。少し強めに蹴りつけ、体制を崩したところへ顔への攻撃を寸止めにする。相手が目を見開き、固まる。

「っ!!…見事……私の負けだ」

プレートを先程得たもう1枚とも差し出してくる。尋常に勝負、と言い出した時から分かっていたが義理堅い人だ。名前を聞かれたのでです、と返しておく。殿付けで呼ばれてしまった。彼はこれでプレートはなくなった訳だが、それでも6点分集めるのをあきらめない、と言うのでそこで別れた。プレートを取っておいてなんだが(あの場合は返す方が失礼だろう)、ぜひ頑張ってほしいものだ。

プレートが3枚集まった。これで6点分。残る問題は1週間どうやって過ごすかだが、他の誰かと合流すると、もれなくその人についている試験官に監視されることになるのだろう。それは女の子的に嫌なので。

「メンチさん」
「なによ」

呼ぶと隠れている木から降りてきてくれた。

「どうせなら隠れてないで1週間後まで一緒に過ごしませんか?」
「確かに。コソコソするのは性に合わないのよね」
「やった! …実はサバイバルとかやった事がなくって」
「はぁ!? アンタそれじゃあハンターなんて名乗れないわよ! …いいわ、この1週間、アタシがじきじきにハンターのイロハを叩き込んでやるわ」
「お、お願いします…」

予想以上だが、本当に面倒見の良い人なのだろう。かなり助かる。残り時間、いろいろ教えてもらいながら楽しく過ごした。