道行01

ゴンと山を駆け回る合間、主にヌシ釣りに専念している時間帯に港で荷運びなどの簡単な雑用でお金、ジェニーを稼いだ。13くらいの女の子が見た目に反して重たいものも余裕で運び、よく働くのでかなり色を付けてもらえたりした。これでも100年程生きている上に、死神として鍛えているのだ。ついでに、知りたがりの子供らしく色々聞いて回るうちに貨幣価値などもわかってきた。

路銀としては余裕すぎるほど集まったころ、ゴンがヌシを釣り上げた。ゴンとともにミトさんと感動的な別れをした。私も受けると言い出した時には実はひと悶着あったが(は女の子なのに!)、最終的には出立を盛大に惜しまれた。

「またいつでもゴンと一緒に帰ってきていいんだからね」
「…うん、ありがとうございます」
「行ってきます!」




そして現在、ゴンが予見した激しい嵐を通過中の船内。さっきまで居た子供2人組を馬鹿にしきった目で見ていた一見屈強そうな男たちが総ダウン。皆船を下りていき、残ったのは4人だけ。赤ら顔の船長が質問を始めた。

「さて…まずは名前を教えてもらおうか」
「オレはゴン」
だよ」
「私はクラピカという」
「…俺はレオリオだ」

名前を名乗るだけなのにもうそれぞれの個性が溢れていて面白い。楽しそうに、簡潔に、ふて腐れ気味に。この面子が揃うといよいよハンター試験を受けている実感がわいてくる。

「で、お前たち、なぜハンターになりたいんだ?」

考えているうちにも話が進む。大人げなく突っかかるレオリオと素直に話すゴン。騒ぎになる前に口をはさむことにする。

「私は、ライセンスが便利なのと試験が面白そうだからかな」
「あっ、お前まで言っちまうのか!」
「私も同感だな、レオリオ」

レオリオにはからまれてクラピカにはスルーされ気味だ。そのまま2人でやや一方的な言い争いに発展するが、船長の試験は始まっているとの発言に一時鎮静化。

「…私はクルタ族の生き残りだ」

そういえば彼は復讐者だった。止めるべきなんだろうか?何かやたら強い敵集団(話の中に出てきた。幻影旅団だ)が居た気がする。でも、私としては仇討は仕方ないことのように思う。人を恨む、ということにはかなりのエネルギーが必要だ。恨まれる方も業が深い。このままだときっと巻き込まれるだろうが、専守防衛で生きたい気がする。

しかし、このレオリオはかなり品がない。今度は本格的な言い争いになる。2人とも甲板へと出て行ってしまった。

「おい、こら!話はまだ終わってないぞ!」
「放っておこうよ。『その人を知りたければ その人が何に対して怒りを感じるかを知れ』ミトおばさんが教えてくれたオレの好きな言葉なんだ。オレには、2人が怒っている理由がとても大切なことに思えるんだ。止めない方がいいよ」
「でも嵐で危ないし、見には行くよね?」

結局、決闘中に船からに落っこちそうになった船員を助けに文字通り飛び出したゴンを3人で引っ張り上げて、2人は和解。4人で和やかな空気でいるところに船長が合格を宣言した。

「やったね、!」
「ホント!…改めてよろしく、クラピカ、レオリオ」
「こちらこそ」
「おう」

これで兎にも角にも先に進めそうだ。

02

大分好感度が上がったらしい船長により、一本杉を目指すように言われる。レオリオはこないかと思われたが、結局合流した。背後を誰かがついてくるのを気にしつつしばらく歩くと、いかにもな多くの気配がある怪しげな通りについた。

「薄気味悪いところだな…人っ子1人見当たらないぜ…」
「でも人は沢山いるよね?」
「だね」
「うむ、油断しない方がいい」
「な、なんで分かるんだよそんなこと!?」

ゴンとクラピカは息遣いや衣擦れに気付いたようだ。レオリオはかなり不信そうだが、これはあからさまだろう。

「分かり易すぎるくらいじゃない?」
「お前達と違って、あいにく俺は普通の――」
「静かに!」

クラピカが制止するとガスマスクをつけた一団と、老婆が出てきた。ドキドキ2択クイズとやらが始まるらしい。またレオリオが突っかかっていき、クラピカと言い合いになっているときに後ろの気配が動いた。

「おいおい、早くしてくれよ」

その男は得意気にクイズを受け、私からすると何とも微妙な答えを朗々と語って老婆が開けた道を通って行った。レオリオは問題に対して憤っているが、どうなのだろうか。これも試験だ。何か隠された意図があるのだろう。

「…俺は別のルートで行くぜ!」
「もう遅い。クイズを辞退するなら即失格とする」
「なにぃ!?」

その時、前に進んだ男の気配に異変が起きた。私と目が合ったクラピカが声を上げる。

「レオリオ!このクイズは――」
「待ちな!ここからは、余計な発言をしたら即失格とする。」

クラピカは何かに気づいたようだ。私はまだよく分からないので、様子を伺うことにした。だが、答えらしい答えは浮かばない。なので黙っていたら、それで良かったらしい。キレたレオリオをクラピカがおさめ、説明してくれる。レオリオが謝り、老婆によってさっきの男が向かったのとは違う道を示され、進むことになった。

「う〜ん。駄目だ、どうしても答えが出ないや」

無邪気に言うゴンに3人で軽く吹きだす。

「なんだよ、まだ考えてたのかよ。もういいんだぜ」
「え、なんで?」
「もうクイズは終わっちゃったんだよ」
「それは分ってるよ。でも、もし本当に大切な2人のうち、1人だけしか助けられない場面に出会ったら…」

空気が張り詰めた。尸魂界での事がよぎる。もしも、また逢えたら全部話してしまおうと思う。そう、私なら。

「…ゴンがそんなことになったら、もう1人は私が助けてあげる」
「じゃあ、オレもを助けるよ!」
「もちろん、クラピカ達もね」
「よろしく頼む」
「オレはおまけかよ!」

皆で顔を見合わせ、笑いあう。ここでは後悔しないようにしたい。和やいだ空気の中、歩を進める。次は一本杉だ。

03

「では、はゴンと知り合って間もないのか」
「1週間くらいかな」
「それにちゃ仲が良いな」
「うん!」
「まあね」

話しながら一本杉に居るらしいナビゲーターのもとを目指して歩いているが、老婆の言った時間の倍近くかけているのになかなか着かない。レオリオが『魔獣注意』の看板を見ながらぶつぶつと文句を言い始めた、そんな頃。

「見えた!」

ゴンの言葉に途端に元気を取り戻したレオリオが、辿り着いた小屋の扉をノックする。しかし、返事がない。確実に中には何かが居るようなのだが。

「邪魔するぜ」

扉を開けて見えた光景に身を緊張させる。一匹の魔獣、捕まっている女性、倒れた男性、荒れた部屋。皆がそれぞれ構えたが、魔獣の方が速かった。女性を持ったまま飛び出してゆく。

「けけけけ――」
「きゃあぁぁっ――!」
「つ…妻を…」

真っ先にゴンが追いかけて行ったので後に続いた。クラピカも追ってくる。

「レオリオ、怪我人を頼む!」
「あぁ、任せておけ!」

暗い森の中、魔獣を追ってゴンと駆ける。途中、返事を返す魔獣に興奮するゴンにクラピカが解説。キリコ(魔獣の名前だそうだ)を挑発して女性を取り返す。

「待て!」

ゴンが追いかけていくが、もう一つ似た気配が1人と1匹を追って行っている。

「クラピカ、その人頼める?」
「もちろんだ。はゴンを追うがいい」
「ありがと」

ゴンと2つの気配を追っていくが、少し考えて片方が離れ気味なのでそちらに向かった。いつの間にか気配が入れ替わっている。そっと魔獣の背後をとる。

「ねぇ」
「なっ!?」
「私たちを引き離して、キミたちは何をしたいのかな?」
「――けけ。気付いたか…」

何か話し出しそうだったが、ゴンのいる方から声がした。

「おーい、アンタ、来なよ!」
「行っても?」
「いいよ。一緒に行こうか」

やたら笑ってるもう1匹とゴンと合流し、小屋に戻ってネタばらしを受ける。要するにドッキリだった訳だ。2匹を見分けられるゴンに魔獣たちは嬉しそうだ。それぞれお褒めの言葉をいただく。クラピカは博学を、レオリオは医療と優しさ、私は洞察力、そしてゴンはその特異な才能と運動性。キリコたちは一斉に羽を広げた。

「4人とも合格だ。ハンター試験会場までご案内しよう」

皆それぞれにつかまって宙へ飛ぶ。だがかなり上下に動いて、しかも不安定だ。レオリオが騒いでるが、確かに、これなら霊子で足場を作って自分で駆けた方が安定感があるだろう。やらないけど。

さて、これで正式にハンター試験が始まる訳だ。試験内容はどんなものだったか。