試験後
ゴンの頼もしい言葉に気分が浮上した。そうだ、一人でキルアを行かせてしまったなら、皆で迎えに行けばいい。ゴンが握りしめたままのギタラクルの手からみしみしと音がする。折れたか、と思っているとゴンが身を翻した。
「キルアのとこへ行くんだ。もうあやまらなくたっていいよ。案内してくれるだけでいい」
「そしてどうする?」
「決まってんじゃん、キルアを連れ戻す」
いっそすがすがしいまでにきっぱり言う。だが、ギタラクルには届いていない。
「まるでキルが誘拐でもされた様な口ぶりだな。あいつは自分の足でここを出ていったんだよ」
「でも自分の意思じゃない。お前達に操られてるんだから誘拐されたも同然だ!」
「折しもそのことで理論していたところじゃ、ゴン」
ネテロ会長が2人に割り込んだ。その後も繰り返しになるがクラピカが暗示の可能性を示唆し、レオリオが自分の加勢だったので不合格なら自分だ、と言う。が、不自然な合格ということでクラピカとポックルも言い争う。ハンゾーがさっさと帰りたがる。しかし、
ゴンにはそれらも関係ないようだ。
「どうだっていいんだそんなこと」
決して大きな声ではなかったのだが、皆の耳に届いた。
「人の合格にとやかく言うことなんてない。自分の合格に不満なら満足できるまで精進すればいい。キルアならもう1度受験すれば絶対合格できる。今回落ちたことは残念だけど仕方ない。それより」
ギタラクルの手を握るゴンの力が増していく。
「もしも今まで望んでいないキルアに無理やり人殺しさせていたのなら、お前を許さない!」
「許さないか…で、どうする?」
「どうもしないさ。お前達からキルアを連れ戻して、もう会わせないようにするだけさ」
瞬間、ギタラクルの気配が変わった。ゴンに伸ばす手に、念の高まりを感じる。危険だと叫ぶ前にゴンは何か感じたのだろう、飛び退いた。
「――さて、諸君よろしいかな」
ネテロ会長がタイミングよく話し出した。結果として合否は動かない。改めてハンター証の説明が行われ、解散が宣言された。
「ここにいる9名を、新しくハンターとして認定いたします!」
ゴンはすぐさまギタラクルに声をかけた。
「ギタラクル、キルアの行った場所を教えてもらう!」
「やめた方がいいと思うよ」
「誰がやめるもんか。キルアはオレの友達だ! 絶対に連れ戻す!!」
「後ろの3人も同じかい?」
「当然よ」
レオリオが勿体ぶっていう。私とクラピカも頷いた。ギタラクルは少し考える。
「…いいだろう。教えたところでどうせ辿り着けないし。キルは自宅に戻っているはずだ。…ククルーマウンテン。この頂上にオレ達一族の棲み家がある」
が、そう言い置いた。
「――さて。これでもうこの建物を出たら、諸君らはワシらと同じ!ハンターとして仲間でもあるが、商売敵でもあるわけじゃ。ともあれ、次に会うまで諸君らの息災を祈るとしよう。――では、解散!!」